第3章 美と数学
美こそ試金石
醜い数学に永遠の場所はあたえられない
G.H.ハーディー 1877-1947 イギリスの数学者
オックスフォード大学 数学科教授 ロジャー・ペンローズ (以下RP)
「私が数学の美しさに魅せられたのは、いつの頃からだったでしょう。ただ小さいときから数には興味があり、幾何学的なものも好きでした。覚えているのは、ある法則を見つけたときのことです。2+2=2×2であることは誰でも知っていますね。
| 私は | 1 | 1 − 2 | ×3 = 1 | 1 − 2 | +3 | にも気づいたのです。 |
芸術家 マイケル・クレイグ-マーティン(Michael Craig-Martin ;artist) (以下MM)
「数学の公式の美しさというのは、巨大で、複雑で、捉えがたいものに、きちんとした形を与えるところにあるのだと思います。それは無秩序なものに秩序を与えるのです。数学は混沌としたものに分け目を入れ、人間が手にとって見ることができるものにし、それを意味あるものに換えるのです。
芸術家の中には数学者の仕事も創造活動であり、自分達と共通するところが多いと感じている人も大勢います。」
E=mc2というのは、信じられないほど美しく深い意味を持つ公式です。これほど偉大なことが、これほど単純な言葉で表せるとは驚くべきことです。
「確かに数学者と芸術家には共通点があります。優れた数学者は芸術家であるべきです。問題は数学者の生み出す美が簡単には伝えられないということでしょう。数学者にとっては、それが歯がゆく、大きな不満のタネになりがちです。例えば、あなたが数学者で、これは美しい、なんてきれいな数式なんだ、と思ったとします。ところが、それを誰かに伝えたくても、たいていの人には理解してもらえません。大勢の人には認めてもらえない前衛芸術のようなものなのです。」(RP)
「芸術の真の意味は隠されています。芸術は世界を象徴的に描くものであり、そこが数学とよく似ています。数学も世界を表現する手段ですが、ただ見たままに描くのではなく、数という象徴を通して世界を記述するのです。」(MM)
「数学が行うのは理想化です。数学は決して無味乾燥な記号や数の羅列などではありません。数式は痕跡にすぎず、求めている実態はそこにはありません。数学が語るのは理想化された構造なのです。数学的な探求においては、美は瞬時に到達する方向を示す、いわば灯台の役割を果たします。2つの道があって、いろいろと考えても、どちらが正しいか決めかねるとしましょう。そういうときは、2つを較べて美しいと感じるほうを選べば、たいていは間違っていません。」(RP)
真理が究極の基準であるとすれば、美はそこに至る道を示す標識、あるいは優秀なガイドだといえるでしょう。
真理は人間がつくるのではなく、すでにそこにあるものだという気がします。人はそれを発見するだけなのではないでしょうか。
数学者でない者に
私の作品は見せてはならない
レオナルド・ダ・ビンチ
更新日:'99.04.30 M.Tanaka